星形リセスの採用は、トルク伝達への第一歩。

高級機械時計や超精密小型デバイスの設計では、十字穴付きのねじの採用を考える技術者は少数だ。
理由はいくつかある。

1:荷重を嫌う

十字穴のねじを回す際に、荷重をかけると非締結物が歪む。
非締結物が破損する恐れもあるので、ゼロ荷重でねじを回したい。

2:六角穴では頭部が大きくなり、小型化が出来ない

六角穴はL型レンチに代表されるように、荷重が不要。横からの締結が可能になる。
ただし、六角穴には工具との勘合部分長さが必要なので、六角穴付きボルトの様に、大きな頭部が必要。
頭部を薄くすれば、DIN7984低頭キャップの様に首下不完全ねじ部を大きく取る必要があるので、小型締結物には不向き。

3:星形リセスの方が六角穴より、小型化、軽量化に優れる

星形リセスの6ロブ、ヘキサロビュラー、トルクス……は荷重が不要なのでL型レンチの様に横から締結が可能。
六角穴よりもリセス内勘合高さが低く出来るので、頭部を薄く出来る。
不完全ねじ部もDIN7984低頭シリーズよりも大幅に小さく出来る。

ISO規格やJIS規格で、最もトルク伝達の優れたリセスは、星形ヘキサロビュラーである。
さらに、規格最高峰のトルク伝達性能でも満足いかない技術者がいる。
その場合には、OSG社のラインヘッドシリーズ、米国アキュメント社のTorxPlusなどを採用する設計者がいる。
両者とも知的所有権があるので、各ライセンシーが詳細な情報を持っているはずである。

日本ねじユーザー設計者においては、ISO、JIS規格化されている星形リセスの採用が今後欧州並みに広がると考えおり、サイマグループでも310スリムシリーズの星形リセスねじの在庫を今後も拡充させるつもりである。

[コラムニスト]
株式会社サイマコーポレーション
グループCEO & テクニカル・セールス
斎間 孝