星形リセスの利点について今回も触れておきたい。
トルク伝達が十字穴や六角穴よりも優れるので、ねじの小型化(M6からM5へのダウンサイジングなど)が可能である。
さらに、星形リセスはリセスと工具の勘合が優れているので、リセス深さを浅く設計できる。
すなわち、ねじ頭部の低頭化が可能になる。

ただし、ねじ製造側のロジックでは、製造金型の寿命を高める為や生産スピードをより高速化可能にするために、星形リセスの内面を大きく取る。
若干のテーパーなどを許容する方向へ行きがちである。
なべ頭などの頭部体積が大きな形状のねじ頭部では全く問題にならないが、低頭系ねじ、特にサイマの310スリム小ねじに代表される、
・超極低頭ねじ
・極低頭ねじ
などのねじ生産では、製造側が嫌がる内面、首下r指定などを極限までギリギリ攻めた生産をすべきである。
当然、ギリギリのヘッダー加工になるので首飛びの心配を製造中に常にすべきである。

その生産技術に関する、世界最大の展示会が、2024年4月15-19日まで、ドイツ・デュッセルドルフで開催された「Wire Dusseldorf 2024」である。
今年は、筆者も久しぶりに訪問して、自身の勉強をしてきた。
この展示会は、ねじ素材の「ワイヤー」の製造技術の展示会。
一般的な、小ねじ、ボルト、ナット、六角穴付きねじ類、などを生産する分には、どの様な素材を購入しても製造は可能である。
ISO、JIS、DINなどの規格品は、世界中どこの国でも生産できる技術レベルに設定されているから。
一般規格品は、「どの国でも生産できる事」と言う成り立ちがあるからだ。

ただし、310スリム小ねじの様に、ギリギリのスペックを責めると、
・伸線後硬度
・伸線後の素材径とその公差
・少し工夫した素材成分
・熱処理技術
等を工夫することが必要。
従い、規格の十字穴や六角穴では、締結スペックが上がらないのである。
この工夫をしないと、ねじを使用した際のトラブルになる。
ねじの使い手の、ねじユーザー殿もギリギリの機構設計をしているからである。

Wire Dusserdolf 2024に関してご興味ある方は、サイマの各SNSをご覧ください。
また、サイマへお問い合わせください。

[コラムニスト]
株式会社サイマコーポレーション
グループCEO & テクニカル・セールス
斎間 孝