低頭系ねじ選択の注意点について、以前のコラムで書きました。
2025年3月25-27日まで、ドイツ・シュツットガルトで開催されたファスナーフェア・グローバル展示会場で、サイマ製「310Slimねじ」を展示していたので、
欧州の技術系営業、品証の方々と、DIN7984からの派生商品の「低頭系ねじのトラブル」について、議論する回数が多かったので、再度低頭系ねじの話です。

DIN912(JISと同じ六角穴付ボルト、通称キャップスクリュー)の頭部を薄くした、DIN7984とDIN6912の一般規格品が世界中で流通しています。
DIN7984の最大の弱点は、不完全ネジ部の長さ規定と、頭部首下rの大きさです。
この弱点が、エンドユーザーでどんな問題を起こすかというと、非締結物との接触で破壊と摩耗による、「ゆるみ」の問題が発生しやすくなる点です。

ねじ部の破壊が起きやすい場所は三か所あります。
1:頭部首下での破壊
2:ねじの切れ上がり部分の破壊
3:ナットなどのはめ合い部分での破壊

全ねじでは、1と2が同じ部分になるので、頭部首下の補強の為に不完全ネジ部を大きくしたり、首下r部分を大きくする必要が規格上あります。
従って、DIN7984は全ねじなのに、見た目が半ねじの様に見えるサイズが有ります。
六角穴底部分と首下部分の寸法が狭くなるので、首下r寸法をDIN規格は大きく取っています。
また、六角穴深さを浅くすることで頭部破断のリスクを軽減していますので、六角レンチが舐めてしまうというのも、規格上仕方のないことです。

これらのプロセスを検証しないまま、さらに頭部の低いねじを製造しているねじ工場が国内だけでなく世界中にありますので、注意が必要だと感じています。

実際にサイマ製以外のねじの相談も受けていますので、DIN7984発想で製造されている事がよく分かります。

・不完全ネジ部を小さくする
・首下rを小さくする
と、頭飛び発生確率が上がりますので、「補強対策」を十分に考えた低頭系ねじ選択を強くお勧めします。

ねじり破壊トルクを明確にして販売している超極低頭ねじをお勧めします。
十字形の超極低頭系ねじは、締結時の荷重がかなり過大になりますので、これも要注意です。
欧州では、DIN7984は強度区分8.8の流通在庫が多く、10.9は少ないです。以前12.9のDIN7984も見たことが有りましたが、
締結トルクにねじが耐えられないのでしょうか、現在ではあまり目にすることが有りません。

[コラムニスト]
株式会社サイマコーポレーション
グループCEO & テクニカル・セールス
斎間 孝